北天満サイエンスカフェ
北天満サイエンスカフェは、天五中崎通り商店街(おいでやす通り)で行われている、まちづくりと地域活性のための
プロジェクトです。お茶を飲む気軽さで、科学者と一般の皆さんが議論・交流する場を提供しています。


お知らせ

2024.6.29
商店街アーケードでの対面開催は、猛暑を避け9月に再開します。

次回のサイエンスカフェ

第179回北天満サイエンスカフェ

気候危機はどこまで来たか?

日時:9月29日(日)14時~16時

ゲスト:河野 仁さん(兵庫県立大学・気象学)

会場:天五中崎通商店街(黒崎町交番付近)




参加無料 ただし、悪天候の場合は中止

こども面白サイエンスカフェ・オンライン

面白実験をいろいろ紹介します。

前回のサイエンスカフェ

第178回北天満サイエンスカフェ「介護福祉はどうなっていくのか?」
今回は「介護福祉はどうなっていくのか?」をテーマに、大阪健康福祉短期大学地域総合介護福祉学科の堅田知佐さんを話題提供者に迎えて開催しました。



介護職員を養成する立場である堅田さんから、まず教育現場と介護現場の価値観の乖離について問題提起がありました。介護福祉士養成施設では、要介護者との関係構築や生活実態の把握に時間をかけることが重要だと教育している一方で、多忙な介護現場では効率性を重視した時間をかけない介護がなされる実態があるのです。この乖離の要因は介護職員の人手不足にあります。介護職員は3K(キツイ、キタナイ、キケン)のイメージがあることに加えて収入や社会的評価まで低く、介護福祉士養成施設やその入学者数はともに近年減少しています。一昔前は「優しい」「社会的意義が大きい」などの良い印象があった介護職ですが近年は負の側面が出回り、養成校入学者の減少傾向は若年層に強く見られます。

さらに悪いことに、人手不足を解消する目的で行われた介護業界への参入を容易にする政策は、介護の質を落とす原因になってしまっています。養成校に行かなくても現場経験と研修受講により介護福祉士資格が取得でき、介護福祉の専門知識や技能を取得していなくても入職できるため、知識がない職員が転倒、死亡事故を起こしたり、自覚なく虐待したり、他方で自身の腰を痛めるなど怪我することが多いのです。さらには資格の有無で業務に違いはなく、収入もあまり変わらないこと、現場職員の大多数を占める無資格者の意見が優先されて業務方針が決まることから、有資格者の若手が現場に出てやる気をなくしてやめてしまう残念なケースもあります。



次に、介護福祉の本質について考えました。介護とは本来食事、排泄、移動を介助する単なる「世話」ではありません。要介護者を身体的、精神的により良い状態にすることが目的であり、そのためのコミュニケーションやレクリエーションも必要です。例えば身体的機能は変わらなくても、コミュニケーションにより高齢者が笑顔が増える、生きがいを持てるようになる、引きこもりでなくなる、というのは重要な変化です。効果測定基準は「身体機能が向上したかどうか」のみであり精神的変化が考慮されない現在の介護保険制度は改善されるべきでしょう。

また、社会全体の介護への認識も変化が必要です。社会福祉学者の一番ヶ瀬康子さんが「介護は人権保障の総仕上げの援助」と言ったように、自由に身体が動かなくなったときに必要な介助を受けることも人権です。社会的に高齢者を支援する強いシステムが望まれます。

続いて行われた討論では、参加者から大阪市が全国で最も介護保険料が高いことや、介護保険料を支払ってもサービス受給基準により援助が受けられないことに強く関心を抱いている発言がありました。また、参加者の多くが介護の問題を自分ごととして捉えており、介護施設に入居せず一人暮らしをしていた時の方が明るく元気だった、施設に入った途端歩けなくなった、といった身近な要介護者の実体験に基づく意見も飛び交う活発な議論が繰り広げられました。

単身世帯のうち約3割が高齢者である日本において、そして誰もがいずれ無関係ではいられなくなる介護について、関心が高まり現状の課題を解決する必要性を感じた一日でした。梅雨を目前に晴れて暑い中でしたが、ご参加ありがとうございました。

第176回北天満サイエンスカフェ「PFAS汚染 私たちの水は大丈夫?」
4月とは思えない汗ばむほどの日和の日曜日、いつものように商店街アーケードのサイエンスカフェが始まりました。テーマは、PFAS汚染。PFAS(ピーファス)とは、たくさんのあるいはすべての水素原子をフッ素原子に置換した炭化水素鎖を含む化合物の略称で、石鹸の主成分である脂肪酸の炭化水素鎖の水素をフッ素に置換した化合物などを含みます。天然にはこれらのフッ素置換化合物は存在しないのですが、もとの脂肪酸は人間の体も作っているごくありきたりの物質です。PFASは化学的に安定で、水をはじいたり、高温にも耐えるなどの有用な性質を持っているので、日常生活の至るところで使われてきました。ところが、これらの化合物は人間の体に取り込まれたときに、発がん性が疑われるようになり、国際的には10年以上前から製造や使用の規制対象になっていました。



日本でも最近になって、東京横田や沖縄の米軍基地周辺や、PFASを製造していた摂津市のダイキン工業周辺の地下水が高濃度に汚染されていることが明らかになったことがきっかけに、ようやく関心が高まってきました。今日の話題提供者の出口幹郎さんは、これまでに大阪や阪神間、神戸、明石の自治体等が行ってきた河川や地下水の調査結果を紹介。大阪の北部では、摂津市を中心に東淀川区まで広範囲に地下水の汚染が広がっています。また、大阪東部では寝屋川の汚染が確認されています。参加者から下水処理場が汚染源になっているのではとの指摘。また、明石川では、産廃処分場に繋がる排水路で高濃度の汚染が明らかに。これに関わっては、出口さんは明石市に対して情報公開請求を行ってPFASの分析結果報告書を得たとのことです。出口さんは河川の水量や流速が小さい場合は高濃度になる可能性があると指摘します。

私たちには毎日使う水道水の汚染が最も気になるところですが、それぞれの水道の水源近くに汚染源となる施設がないか点検が必要。加えて、明石川の分析結果報告書の検討結果ではPFAS汚染を1リットル当たり10 ナノグラム以下にするためには、明石市内の2つの浄水場に取り込まれる原水のPFAS濃度が1リットル当たり50ナノグラム以下であることが必要と考えられると、出口さんは指摘。



現在の日本の水道水のPFAS暫定目標値(法的な規制値ではない)は1リットル当たり50ナノグラムですが、最近アメリカでは、飲料水の基準値(法的な規制値)が1リットル当たり4ナノグラムに引き下げられました。出口さんは、調査した範囲では多くの自治体の水道水がアメリカの新基準値をオーバーしているとのこと。

参加者からは、大阪は昔から七名水で知られる土地で、今でも地下水を利用する家庭も少なくないので、丁寧な調査が必要ではないかとの意見。最近、北海道や熊本で大規模な半導体工場が建設されているが、これらが新たなPFAS汚染をもたらすのではないか心配の声。また、化粧品メーカで働くという参加者は、PFASは今でも化粧品に広く使われているので、PFASを含まない商品を開発しようと思うと発言。これには参加者一同拍手でした。

討論への熱心なご参加をありがとうございました。

…(前回以前の記録)