北天満サイエンスカフェ
北天満サイエンスカフェは、天五中崎通り商店街(おいでやす通り)で行われている、まちづくりと地域活性のための
プロジェクトです。お茶を飲む気軽さで、科学者と一般の皆さんが議論・交流する場を提供しています。


お知らせ

2022.11.22
第162回北天満サイエンスカフェはオンライン開催

次回のサイエンスカフェ

第162回北天満サイエンスカフェ

怒りをコントロールする

日時:1月21日(土)14時~16時

話題提供:澤田慎一郎さん(日本アンガーマネージメント協会)

会場:オンライン



オンライン参加を希望される方は、nagano▲chem.sci.osaka-u.ac.jp 宛(▲を@に変換)に、件名「162回サイエンスカフェ参加希望」として、氏名と電子メールアドレスをお知らせください。折り返し、サイエンスカフェへの招待状をお届けします。
(参加無料)
また、サイエンスカフェにおける議論は主催者によって収録編集され、一部が後日当ホームページで公開されることを予めご了承ください。

こども面白サイエンスカフェ・オンライン

面白実験をいろいろ紹介します。

前回のサイエンスカフェ

第158回北天満サイエンスカフェ「大坂の天文学 江戸時代を中心に」
6月19日、芝川明義さんをゲストに迎え、第158回北天満サイエンスカフェが開催されました。コロナウイルス感染症が流行し始めた2019年12月以降、2年半に亘ってオンラインでの開催を余儀なくされていましたが、北天満サイエンスカフェは再び商店街の路上に戻ってくることができました。以前から当サイエンスカフェを知っていて声をかけてくれた方や、たまたま通りがかり足を止めて、熱弁をふるう芝川さんやスクリーンに映し出された絵をじっと眺める方など、コロナウイルス禍以前の光景が商店街に復活しました。また、路上復活の第1回に相応しく、島根、滋賀、千葉からの参加者もあり、梅雨の晴れ間の下、楽しく時間を共有することができました。



さて、今回の主題は「江戸時代の大坂の天文学」なのですが、芝川さんのお話しは暦(こよみ)の歴史から始まります。暦は、農耕・漁業・経済活動や儀式をするために重要な役割を果たし、社会生活を行うためには共通の時間を持つことが必要なため、昔から人間にとってなくてはならないものでした。正確な暦をつくるための必要から、注意深い天体観測が成されるようになりました。世界各地で様々な暦が作られて、より正確なものが新たに発明されてきました。日本最古の暦は日本書紀によれば、553年に百済より伝来し推古天皇が導入した中国の元嘉暦です。

日本でも地域固有の暦が沢山作られるようになり、江戸時代には暦に関する研究も盛んになりました。中でも大坂にはその進展に貢献した人物が沢山いました。なぜなら、大坂は昔から通商の中心地で、暦などの役に立つ研究には商人や資産家が進んで資金を出したからです。西洋天文学を導入した麻田剛立(ごうりゅう)らや、寛政暦を完成させ伊能忠敬の師匠でもある高橋至時(よしとき)、また窺天鏡という望遠鏡や、星座、月の満ち欠け、二十四節気、天体の位置がわかる平天儀図解を作った岩橋善兵衛も大坂の人物でした。

芝川さんは、偉人たちのお墓や観測顕彰碑、名前が付いた博物館などが大阪市内や府下のあちこちにあることも紹介されました。大阪湾に沈む夕陽が見られ、日想観を育んだ上町台地に「夕陽が丘」という地があることからも、大坂と天体観測・暦との深い結びつきが感じられます。大阪の街を歩くときに、こんなことをちょっと思い出すと楽しいかもしれません。

第155回北天満サイエンスカフェ「パフォーミングアーツとまちづくり」
今回のテーマは「パフォーミングアーツとまちづくり」です。甲賀雅章さんをゲストに迎え, デザインの視点からまちづくりについて考えました。



まず「デザイン」とは一体なんのことでしょうか。 視覚的刺激が組み合わさったもの?または, その色や形を工夫すること? いいえ, それらは最終的なアウトプットに過ぎません。甲賀さんによれば, デザインは「新たな価値を生み出す計画的行為」です。色や形といった最終成果物に至るまでの過程が重要であり, それは徹底的なリサーチと「クリエイティブ・シンキング」によって支えられています。クリエイティブ・シンキングとは, “従来の価値観や慣習に疑問符を抱き, その本質的意味を議論すること” で,「デザイン」には不可欠な要素のひとつです。

デザインの例として, 川根茶 (静岡県) のポスターが挙げられました。一般的なお茶のポスターには鮮やかな緑色の茶畑が用いられます。しかし川根茶の特徴は山間地で栽培されることによる味わいにあるため, 霧がかった夜明け頃の茶畑をポスターに用いています。 慣習を疑い, 徹底的なリサーチに基づいて対象の価値を最大に伝達する「デザイン」を実感することができました。

さて, ここからはデザインによる社会課題の解決について考えていきます。 「まちは劇場」というキーワードを掲げ「市民協働型の取組みで人が集まるまちに」変化していった静岡市の事例が取り上げられました。1992年から始まった「DAIDOGEI WORLD CUP in SHIZUOKA」に変化と継続のためのエッセンスが詰まっています。

重要なことの1つ目は, 未来の変化を見据えて対象のアイデンティティを見極めることです。甲賀さんは静岡市民の特性から「まちは劇場」を実現すれば, 50年後には文化芸術の創造都市となり得るだろう, と活動を開始しました。 2つ目は, 客観的な評価基準を持ち, 絶えず活動を顧みることです。主観的なアピールポイントと, 他者にとっての価値は必ずしも一致しません。本質的な課題解決, 価値の創造のためには, クリエイティブ・シンキングによる見直しが不可欠です。その結果, 新たな試みが登場し続けるため, 一過的なプロモーションではなく, 静岡市のブランディングに繋がっています。 3つ目は, 多くの市民が楽しく巻き込まれて自走していく仕組みです。大道芸ワールドカップは1000名以上のボランティアによって運営されます。職種別に募集するため, 市民は関心やスキルを存分に活かすことができ, 主体的かつ質の高い活動が生み出されます。また, 市民クラウン (道化師) を育成する学校も設立されており, その卒業生が地域に入り込んで活動しています。



このような取組みで, 静岡市には芸術文化が浸透し, 寛容且つ積極的な市民特性へと変化しました。まさに, デザインによってまちが豊かに変化したと言えます。2018年, 静岡市「まちは劇場推進室」の誕生で, 市民と行政の協働が進み益々発展していくことでしょう。

サイエンスカフェの参加者からも, 自身の実践のための質問や感想が寄せられました。今回のサイエンスカフェが, 皆さんにとってのよいきっかけになればいいなと思います。

ちょっと覗いてみる


第154回北天満サイエンスカフェ「地域における鉄道の復権」
今回は、北海道出身・在住で社会政策を専門とする美馬孝人さんに、「地域における鉄道の復権」について話題を提供していただきました。



かつて日本は、国有鉄道法によって、安価で安心な移動の権利が保障されていました。しかし、北海道ではかつて漁業や林業、石炭などで栄えた地域の過疎化が激しく、この40年でそのような地域の人口は半減しました。これに伴い、1960年代に最長で約4000 kmあったJR路線は徐々に廃線に追い込まれ、2017年現在で運転している距離は2464㎞です。さらに、このうち約半分の区間が「単独では持続困難」とされ、自治体と廃線が協議されている現状があります。加えて、新幹線の札幌への延伸によって2030年にはJR小樽―函館間の経営分離も決まっており、沿線地域が辺縁化され取り残されてしまうことが予想されます。

人口が少ない地域の赤字経営路線を廃線にすればますます過疎化が進み、反対に都市では過密化が進んでしまうという悪循環が生じます。一方で、過疎地の中でも鉄道路線のある地域では、人口減少を比較的抑えることができています。鉄道の存廃は大学や企業の誘致存続にも大きく影響する重要な問題です。

討論では、国と私鉄とのインフラ協力体制や、北海道の鉄道の赤字区間をどのように存続させていくべきかについて議論しました。さらに、北海道民でもある美馬さんに、地元の人たちは現状に対して実際どのように感じているのかを紹介していただきました。鉄道に替わる公共交通手段としてバスがありますが、バスと比較して電車は時間を守り、乗り心地も良く、悪天候にも比較的強いため、地元民から支持されているのだそうです。

同じ日本でも都市部では満員電車は当たり前の光景で、数分ごとに発車する電車にいつでも乗ることができ、廃線など考えられない地域も多いでしょう。しかし、都市に住む人間も、過疎地域の問題に対して無関心であってはならないと考えます。廃線問題は北海道に限らず、全国の過疎地で深刻な問題です。持続可能な社会を展望してゆく上でも重要な課題であることがあらためて分かりました。

第153回北天満サイエンスカフェ「サバクトビバッタ 大発生の謎と生態」
今回のサイエンスカフェでは、世界で最も破壊的な越境性害虫と呼ばれる「サバクトビバッタ」の生態と大発生の謎について、元農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所の田中誠二さんを話題提供者に迎え、理解を深めました。



外見は?
日本でよく知られているトノサマバッタと似ていますが、サバクトビバッタの幼虫は周囲の環境によって体色が変化します。数が少ない時は孤独相と呼ばれ背景色に似た緑色、茶色、黄色である一方で、大発生すると群生相と呼ばれ背景色に関係なく黒くなり、集団で移動するようになります。最近の研究で、黒化ホルモンとその遺伝子も解明されました。黒化の原因として匂いは重要ではなく、接触刺激や近距離で物体が動くのを見るという視覚効果が重要な要因であることがわかっています。

飛び方は?
寒さに弱いサバクトビバッタの成虫は気温の低い上空では動きが鈍くなるため、長距離移動の際も地上から数十メートルの低い場所を飛行します。群れをなして一日で数百km移動することもありますが、全て自力で飛ぶわけではなく、ほとんど風に身を任せて移動しています。2020年の大発生の場合も、インド、パキスタンそしてネパールまで到達しましたが、5000メートル級の山が連なるエベレスト山脈を越えて中国などに侵入することはありませんでした。とはいえ、体力を消費する長距離飛行前には体重と同量だけ食べることもあります。

食性は?
サバクトビバッタは草食です。砂漠は植物の量が少なく他の動物との競争が激しいため、植物も自己防衛のために棘をつけたり表面を硬くしたり、葉の中に毒を蓄えたりと工夫をしています。サバクトビバッタは毒をもつ植物も食べることができ、胃や腸には毒が未消化で残っている場合があり、天敵である鳥やトカゲから身を守る働きをすると言われています。

今後もサバクトビバッタは条件が整えば再び大発生する可能性があります。大発生しても、日本に到達する可能性はきわめて低いですが、アフリカや中東、西アジアなどで多様な農作物に深刻な被害をもたらすことから、輸入大国である日本としても、人ごとではありません。信頼性の高い研究によって、さらなるバッタの生態解明と新防除法の開発が、喫緊の対応として世界中で求められています。

…(前回以前の記録)