• 第40回「身の回りのものに潜む“かたち”」

    Date: 2012.02.17 | Category: 未分類 | Tags:

    本日、記念すべき第40回北天満サイエンスカフェのテーマは「身の回りのものに潜む”かたち”」です。話題提供は、大阪大学理学研究科数学教室幾何学講座の菊池和徳先生です。

    身の回りのものには気づきにくい”かたち”が潜んでいます。今回はその”かたち”、普段見逃しがちなところに隠れている幾何のお話です。

     

    さて、いきなりですが問題です。

    ある人が川の岸から向こう岸まで1艘のボートで渡りたいと思っています。この人は1匹のオオカミと1匹のヤギ、1玉のキャベツを持っています。ボートは小さいので、この人(操縦する人)の他にはオオカミかヤギかキャベツのいずれか1つしか一緒に乗せることができません。オオカミとヤギを同じ岸に残すとオオカミはヤギを食べてしまい、ヤギとキャベツを残すとヤギがキャベツを食べてしまいます。ヤギ・オオカミ・キャベツはみなボートを漕ぐことはできないものとします。この時、最も少ない手順でオオカミもヤギもキャベツも損なうことなく無事に対岸まで渡る場合、この人は何往復半ボートを漕ぐ必要があり、そのような手順は何通りあるでしょうか?答えは後程。

     

    年も明け1月ということで寒くなってきましたので、今回は北天満サイエンスカフェの会場を模様替えしました。

     

     

     

     

     

     

     

     

    中はヒーターがかかっていて多くの来場者の皆様に暖まっていただくことができます。暫くの間、屋外でのサイエンスカフェでは登場する予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。

     

    数学というと学校の授業や試験勉強で嫌われがちですが、少し視点を変えるだけで日頃から気楽に楽しむことができると菊池先生は言います。

    そこで先生が最初に取り上げたのが米国で生まれた「スイッチピッチ」というおもちゃです。これは上に放り投げて(ピッチして)受け取ると色が変わる(スイッチする)不思議なボールです。この色が変わる仕組みこそが潜んでいる”かたち”なのです。

     

     

     

     

     

     

     

     

    上の写真はスイッチピッチの羽を取ったものです。左が色が完全に変わっている状態、右は色が変わる途中の状態です。写真のように右は正六面体、左はそれに内接する二つの正四面体のうちの一方(頂点が青)が隠れています。安定な左(青頂点が外)の状態から不安定な右(青頂点と赤頂点の不安定バランス)の状態になると、再び安定な状態になろうとしてもう一方の正四面体構造(赤頂点が外)の状態、つまり色が変わった状態になるとのことでした。

     

    おもちゃの次に先生が紹介されたのが、おみくじです。おみくじの結び方を少し工夫すると紙テープだけですべての正奇数角形(正五角形等)を正確に折ることができます。しかしほとんどの正奇数角形は目盛のない定規とコンパスでは作図ができないことが証明されていて、これには先生も驚いたようです。正五角形は一回団子結びをするときに紐を調節すると完成します。イメージとしては正五角形の中に線を引いて星を作るイメージです。下の写真も参考にして下さい。その要領で正七角形以降も同様にできます。その他にも三つ編みに黄金比が隠されているというお話もありました。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    ここで最初の問題の解答です。答えは3往復半、2通りです。先程の問題に菊池先生は下のような図を見るそうです。

     

     

     

     

     

    この図を見出すにはそれなりの時間がかかり、すぐに思いつくものではないそうです。またこの問題に条件を付け加えると図はまた別の”かたち”を取り、手順や手順の数も変化します。その他にも双子のシャボン玉の表面積は複雑な手法を用いなくても、平らな”かたち”に置き換えて一瞬で計算できることも教えて下さいました。

    普段は社会のコトや理科のコトを取り上げることが多い北天満サイエンスカフェ。今回は初めての数学での話題提供ということで、どれだけの方が来場して下さるのか心配する声も一時はありました。しかしそんな心配をはねのける程の多くの方に来場して頂き誠にありがとうございます。そのお陰か質問も活発で質問コーナーでもメダカを大きくするとどうなるか等の興味深い話題が飛び出して終始会場通りの「ホットな」サイエンスカフェになりました。話題提供の菊池先生を始め、当日いらっしゃった皆様に厚くお礼を申し上げます。(N)

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    「三つ編みに隠された黄金比を実現する、三つの輪からなるボロミアン環という形の実演」